【簡単】FSSC22000 version 5.1対応のポイント解説

FSSC HACCP

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2020年4月1日の審査より、FSSC22000 は新たなversion5.1に対応していかなければなりません。この記事では、FSSC22000 version5.1の要求事項毎に、どのような対応を行ったら良いかポイントを解説していきます。


記事の信頼性

この記事を書いている私は、FSSC認証の審査員で、年間100日以上の審査を実施しています。

はじめに

FSSC22000 version5.1の要求事項が公開されました。こちらのホームページでは、以下に、要求事項の翻訳記事を投稿しました。

リンク:FSSC22000 version5.1要求事項の日本語訳

こちらの要求事項を併せてご確認ください。各要求事項毎にポイントの開設をしていきます。

食品安全文化については、以下に翻訳しました。

リンク:食品安全文化の翻訳記事

2.5.1 サービスおよび購入材料の管理

a)食品安全の検証、妥当性確認に分析サービスを使用している場合の要求事項になります。具体的な例を考えてみます。例えば、アレルギーの製品残存がない事を外部の検査機関に分析の委託するようなケースです。その際、委託する外部の検査機関は、ISO17025のような、お墨付きがついた機関で実施することを求めています。もし、検査精度が担保されなければ、食品安全に重大な危害をもたらすかもしれません。このような事が無いよう、外部委託を含め、認証組織が検査精度を担保することを求めている要求事項と解釈できます。


b)サプライヤーが原材料を供給できなくなった場合(例:天災事変等)、代替の原材料調達を実施しますが、その際に調達品が仕様・食品安全上のリスクが無いことを、確実にするための評価手順が必要となります。文書化要求となっています。例えば”緊急時の代替調達規定”等を整備する必要があります。

c)ISO/TS22002-1要求箇条9.2に加え、組織は、動物、魚、シーフードが禁止物質(例:医薬品、動物用医薬品、重金属と農薬)が管理対象となる購買方針を持たなければならない

d)フードチェーンカテゴリーC,D,I及びKに該当する組織は、製品仕様が法令や顧客仕様に適合することをレビューするプロセスを確立することを求めています。例えば、新規製品導入時の設計&開発プロセス(デザインレビュー)の仕組みや、既存製品の原材料置き換えが発生した際の変更管理プロセスなどの整備が必要です。

2.5.2 製品のラベリング

日本で販売する製品では、食品表示法に準拠した表示が義務付けられています。輸出を実施する場合には、輸出先の国における要求事項(例:米国輸出時のFDA要求事項)に準拠した表示をする必要があります。

又、近年飲料でラベルレス製品がありますが、ラベルレス製品の場合、バラ売り販売はNGであり、段ボール箱のセット販売形態となっています。この場合、外箱段ボールに表示が必要となっています。

2.5.3 食品防御(フードディフェンス)

*食品防御・食品偽装については内容が盛りだくさんになるため、別途記事で解説をしています。

 リンク:フードディフェンス脆弱性評価・管理手段の実例

2.5.4 食品偽装の軽減

*食品防御・食品偽装については内容が盛りだくさんになるため、別途記事で解説をします。

2.5.5 ロゴの使用

a)認証を受けた組織は、FSSCロゴを名刺やホームページ、あるいは会社のパンフレットに使用する事で、FSSC認証を受けている事を訴求できます。注意いただきたい点として、認証を受けている範囲内でロゴを使用するという事です。例えば、適用範囲に入っていない部門の名刺にロゴを入れてはいけません。また、一部の製造ラインしか取得していないにも関わらず、全ラインが取得しているかのような見え方もいけません。ポイントは、優良誤認になるようなロゴの使用をしない、という事ですね。


c)製品や外装パッケージ、ラベルにFSSCロゴを入れる事はできません。又、FSSCは製品認証を行っていませんので、”〇〇製品がFSSC認証を取得しました” のような記載もNGです。

2.5.6 アレルゲンの管理

アレルゲンの管理を求める要求事項です。アレルゲンは10ppm混入するだけでも、重篤な健康危害をもたらす可能性があります。特に特定原材料は、重篤な健康被害をもたらす可能性がある為、表示義務があります。

特定原材料:小麦、乳、卵、えび、かに、そば、落花生

外部リンク:アレルゲン表示に関する情報(消費者庁)

a) b)アレルゲンのリスク評価手法、管理手段を確立する必要があります。評価手法、管理手段をまとめた”アレルゲン管理プログラム”を整備する事が推奨されます。

評価:全ての原材料についてアレルゲンリスクの把握を行う(特定原材料の有無)、製造過程の段階ごとに、アレルゲン汚染のリスクを特定する 等

管理手段:原材料の識別・隔離、軽量管理、工程管理、洗浄管理、等

検証手段:アレルゲン同定キット・ATPによるふき取り検証、製品の外部分析、等

2.5.7 環境モニタリング

a)リスクベースの環境モニタリングとして、微生物検査、アレルゲン検査が要求されています。環境モニタリングのカテゴリーは大きく以下の3つに分けられます。

①表面付着・残存

 機器(原料の動線を中心、洗浄後の機器、等)、床、ドアなど(材料や人の接触が多い場所)

②作業者由来

 使用しているユニフォーム、手袋等

③空中浮遊菌・落下菌・浮遊

 クリーンルーム内、清浄区域、クリーンルーム(無菌工程、検査室内など)、

 コンプレッサーエアー(特に製品、工程に接触する空気)、等
b)上記の評価を実施し、管理手段(例:基準値を超え、陽性時の場合の手段など)を定める必要があります。
c)評価の結果の傾向を分析し、必要な管理手段の見直し(PDCA)を実施する必要があります。

2.5.8 製品の配合

組織は、動物の健康に悪影響を与える可能性のある栄養素を含む成分の使用を管理する手順をもたなければならない

2.5.9 輸送と配送

輸送時に汚染されることがないよう、トラック庫内を確認する仕組みや、施錠・封緘を確認する仕組みが必要です。冷蔵・冷凍輸送であれば、コールドチェーンを管理するための確認方法が必要です。

2.5.10保管および倉庫保管

FIFO及びFEFOは材料・製品の先入れ先出しルールの事です。FIFO(First In First Out)は先に入荷したものから、出荷をする事、FEFO(First Expired First Out)は先に期限の切れるものから出荷をしていく事です。必ずFIFO/FEFOしなければならない、という意味ではありません。顧客要求によっては、厳密にFIFO/FEFOでない場合もあります。材料や製品が意図せず、期限切れにならないように管理する仕組みを整備する必要があると解釈できます。

2.5.11交差汚染を防止するためのハザードコントロールと対策

真空パックや窒素充填の包装形態によって、賞味期限を延長するような場合が、こちらに該当します。真空パックであれば、真空漏れがない事の検査方法の確立、窒素充填であれば、残存酸素を確認する検査方法の確立が必要です。

2.5.12 PRP検証

PRP検証とは、自社で決めたPRPが、意図した通りに実施され効果的であるかをチェックする仕組みです。PRPは無数にあるため、食品安全リスクの高いものに関連するPRPを中心に、検証を実施することを規格は求めています。具体的には、現場巡回や洗浄度検証のふき取り検査、組織で定めた規定・マニュアル通りの運用が行われているかの実地検証などが考えられます。

2.5.13 製品開発

製品の設計及び開発手順は、 新製品及び製品または製造プロセスの変更が、安全で法令に適合した製品であることを確実にすることを確立し、実施し、維持しなければならない。以下を含めなければならない
a)新しい食品安全ハザード(アレルゲンを含む)を考慮したFSMSへの変更の影響の評価と危害に応じたハザード分析の更新
b)新製品及び既存の製品及びプロセスに対するプロセスフローの影響の考慮
c)資源及びトレーニングのニーズ
d)装置及びメンテナンス要件
e)製品の配合とプロセスが、安全あん製品を製造し、顧客要求事項をみたすことができるかを検証するための、製造と賞味期限の試験を実施する必要性

2.5.14 健康状態

雇用前の従業員に対して健康診断を実施することを要求しています。あとは、労働安全衛生法に基づく年1回の定期検査、特殊業務に対する健康診断が該当します。健康診断を全員が受診していることを客観的に示す書類(労働基準監督署提出書類)を提示するとよいと考えられます。

2.5.15 マルチサイト認証を取得している組織の要求事項

2.5.15.1 本社機能(中央機能)

a) 本社機能で、FSMS(食品安全マネジメントシステム)が維持されるよう、必要なリソース(責任及び権限、力量)要件を明確にする必要があります。例えば、HACCPチームにおける責任・役割、役職・職掌における責任・役割、を職務権限規定などにまとめる事などが考えられます。

2.5.15.2 内部監査の要求事項

a) マルチで認証している場合には、内部監査プログラムは、本社機能が確立することを求めています。
b)本社機能及び各サイト(工場)が必ず年に1回以上の頻度で監査する事を求めています。
c)内部監査員の資格要件が定められています。満たしていないと不適合になります。
 就労経験:少なくとも組織に1年雇用され、2年間の食品産業でのフルタイム就労経験があること
 教育:高等教育の修了または、正式なコースが無い場合、食品製造または、製造の輸送と保管、リテール検査または、分野での少なくとも5年の実務経験があること
トレーニング:
i. FSSC22000の内部監査における主任監査員は、FSMS、QMSまたはFSSC22000の40時間の主任審査員コースを修了していなければならない

該当のトレーニングコースはこちら 外部リンク:40時間トレーニングコース
ii.その他の内部監査員は、内部監査方針、訓練、技術等をカバーする16時間の内部監査コースを修了しなければならない。

該当のトレーニングコースはこちら 外部リンク:内部監査コース
d)内部監査報告書は、本社の要求事項を理解したテクニカルレビュワーによって、確認をする必要があります。
e) 内部監査員及びテクニカルレビュワーは、年1回、内部監査員、テクニカルレビュワーとして、妥当な力量を持っている事を評価されなければなりません。評価記録を残すことが期待されます。

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