【簡単解説】フードディフェンス、脆弱性評価・管理手段の実例

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✔ 本記事のテーマ
この記事は、FSSCにおけるフードディフェンスって何??という疑問にわかりやすく答えます。

 

✔記事の信頼性
この記事を書いている私はFSSC認証の審査員を担当しています。現役の審査員が、FSSC関連でお困りのみなさまに役立つ情報を提供していきます。

 

フードディフェンスの定義

フードディフェンスの定義


FSSCの追加要求事項にあるフードディフェンスとはどのような意味でしょうか。以下、FSSCのガイダンス文書にフードディフェンスの定義が示されています。
外部リンク:フードディフェンスのガイダンス文書


この中の定義によると、フードディフェンスとは
“イデオロギーの動機づけによる混入を導く攻撃を含む、全ての意図的で悪意のある攻撃から食品及び飲料の安全を確保するプロセス”
ポイントとなるキーワードは、”動機づけ””意図的な攻撃” です。イデオロギー(思想)・動機付けによって食品テロを起こすかもしれない、という”性悪説”の立場を前提に対策を求めているという事です。次に具体的な事例を見ていきます。

具体的な食品テロの事例


食品テロは、日本では縁が薄そうですが、日本でも事例は発生しています。以下、2件の食品テロ事件についてまとめます。
冷凍ギョーザ事件(2007年)
事象:CO・OP手作り餃子によって、健康被害を訴える事例が複数発生した。冷凍食品の餃子から、高濃度の農薬が検出された。
原因:中国の製造委託工場(天洋食品)のアルバイト職員が意図的に製品に農薬を混入させた。
アクリフーズ事件(2013年)
事象:アクリフーズの冷凍食品を食べた消費者が健康被害を訴えた。最終的に約3,000名の健康被害報告が届け出された。メーカーは、約8,000万食の製品自主回収を行った。冷凍食品から農薬(マラチオン)が検出された。 

原因:工場の従業員が、待遇に不満を持っており、自宅の農薬を持ち込み、製品に混入させた。

上記の事例は何れも、食品の製造に携わる人が故意・意図的に、混入を発生させています。

フードディフェンスの脆弱性評価、管理手段の構築手順

FSSCのフードディフェンスの要求事項を以下の記事にまとめています。

リンク:FSSC22000 version5.1翻訳版

端的に要求事項をまとめますと、以下2つのステップが必要です。

・脅威評価を実施

・脅威に対して緩和策を確立

脅威評価・緩和策(管理手段)の確立

脅威評価とは、食品防御に対してリスクのある自社のプロセスの脆弱性の評価を実施する事です。 フードディフェンスの対策では、監視カメラによるモニタリングや建物の施錠管理などを思い浮かべるかもしれません。これらは緩和策(食品防御の管理手段)になります。緩和策(管理手段)をいきなり構築するのではなく、まず脅威評価を実施し、自社のプロセス全体を俯瞰的に確認する事が重要です。

具体的な脅威評価をする際にどのような側面で評価を実施したら良いか、

公益社団法人 日本食品衛生協会が公開しているガイドラインが参考になります。

外部リンク:食品防御のガイドライン

この中で、食品事業者において対応が推奨されている食品防御の側面は大きく以下の4つに分けられています。又、それぞれの側面毎に対策が推奨される項目もまとめられています。

側面 対策推奨項目の例
組織マネジメント 食品工場の責任者は、自社製品に意図的な食品汚染が発生した場合、お客様はまず工場の従業員等に疑いの目を向けるということを、従業員等に意識付けておく。
人的要素(従業員等) 従業員等の採用面接時には、可能な範囲で身元を確認する。身分証、免許証、各種証明書等は、可能な限り原本を確認し、面接時には、記載内容の虚偽の有無を確認する。
人的要素(部外者) 事前に訪問の連絡があった訪問者については、身元・訪問理由・訪問先(部署・担当者等)を確認し、可能な限り従業員が訪問場所まで同行する。
施設管理 工場が無人となる時間帯についての防犯対策を講じる。

ガイドラインにわかりやすくまとめられていますね。このガイドラインの中の対策推奨項目を、自社の実態に即すようチェックリスト化を行います。

チェックリストが完成したら、自社の対応・未対応の状況確認を実施してください。

このチェック(状況確認)が脅威評価になります。

例)脅威評価の実例

脅威評価を実施したら、未対応のものに対して緩和策(管理手段)を講じます。

このようなチェックリストを用いて、定期的に自社の脅威評価を実施し、必要な管理手段の構築・見直しを行います。継続的な見直しを図り、食品防御の仕組みを強固にしていきます。

 

さいごに

今回は、食品防御(フードディフェンス)に対する脅威評価・管理手段の構築手順についてまとめました。今後もFSSCの役に立つ情報を発信していきます。

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